こんにちは。
以前、ジョイント・バイ・ジョイントセオリー(Joint by Joint Theory)についての記事を書きました。
ズレて固くなる関節、ズレて緩くなる関節(ジョイント・バイ・ジョイント セオリー) - りはろぐ|身体の仕組みを伝えるリハビリブログ
身体の各関節は、モビリティ関節とスタビリティ関節に分類され、それらに従ってアプローチをする方がより効率的に結果が出る、という理論になります。
この理論を用いた論文がありましたので、ポイントをまとめてご紹介します。
脊柱の可動性・肋椎関節の向き
『アスリートの腰痛を胸郭からみるーJoint by Joint Theoryー』
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspineres/15/6/15_2024-0609/_pdf/-char/ja
こちらの論文では胸郭の基礎解剖と運動学、胸郭の評価とアプローチ、年齢の若いアスリート対してのアプローチを実際に行っています。
胸郭の基礎解剖と運動学について以下にまとめました。
脊柱の可動性について
胸椎椎間関節|屈曲 30〜40°、伸展 20〜25°、側屈 25〜30°、回旋 30〜35°
腰椎椎間関節|屈曲 40〜50°、伸展 15〜20°、側屈 20°、回旋 5〜7°
この椎間関節の可動性は重要になります。
特に腰椎椎間関節の回旋可動域が5°程度しかないため、体幹を捻る運動や動作では、腰椎椎間関節が過度に動き過ぎて、腰痛の原因の一つになることがあります。
また同じように、伸展や側屈なども腰椎椎間関節の動き過ぎには注意が必要です。
肋椎関節の向き
肋椎関節(肋横突関節+肋骨頭関節)は、その関節の向きが上・中位と下位で異なります。
上位・中位胸郭では前額面に対し約 25〜35°
下位胸郭では前額面に対し約 35〜45°
この関節の向きの違いにより、体幹の運動や呼吸において肋骨の動きが上・中位と下位で異なってきます。
胸椎の屈曲伸展・側屈・回旋時や呼吸時に、肋骨の上2/3と下1/3で、肋骨の動きやすい方向が変わるということです。
肋骨の上2/3と下1/3ではアプローチ方法を変える必要があります。
※但し、これはカップリングモーションにより屈曲時と伸展時の動きパターンが変更されます。
Joint by Joint Theoryと痛みの関連
⑴ 可動性関節が機能低下をきたすと、隣接する安定性関節が可動性を代償しようとする結果、過度な関節運動が生じ安定性の低下に繋がる。
⑵ 安定性関節が機能低下をきたすと,隣接する可動性関節が過度な筋収縮により安定性を代償しようとする結果、Stiffness が生じ柔軟性や可動性の低下に繋がる。
可動性関節=モビリティ関節
安定性関節=スタビリティ関節
⑴は、モビリティ関節の可動性が低下してしまうと、近くにある関節が過度に大きく動いてしまい、安定性が失われるということです。
例:
猫背などの姿勢不良と運動不足
→モビリティ関節である胸郭の可動性が低下
→近くのスタビリティ関節である下位頸椎や腰椎骨盤が過度に大きく動き、安定性が低下
→頸部痛や腰痛が出現するリスク
⑵は、スタビリティ関節の安定性が低下してしまうと、近くにある関節に関わる筋が過度に収縮し、柔軟性や可動域の低下が起こるということです。
例:
頭部前方変位姿勢
→スタビリティ関節である下位頸椎の安定性が低下
→近くのモビリティ関節である上位頸椎の周囲筋が常に緊張
→頸部痛が出現するリスク
このようにジョイント・バイ・ジョイントセオリーから痛みの原因が考えられ、痛みのある部位に隣接する関節に問題があるのでないか、とも考えられます。
現場でよく遭遇するのは、スタビリティ関節の痛みではないでしょうか。
スタビリティ関節自体に問題があるのか?それとも隣接するモビリティ関節に問題があるのか?
これらを見極める必要があります。
まとめ
『アスリートの腰痛を胸郭からみるーJoint by Joint Theoryー』を元に、胸郭の基礎解剖と運動学についてまとめました。
この論文では、更に胸郭の可動性の評価とアプローチ方法について述べられています。
とてもわかりやすい内容でしたので、是非ご覧になってください。
今回は以上になります。
【引用・参考文献】
『アスリートの腰痛を胸郭からみるーJoint by Joint Theoryー』
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspineres/15/6/15_2024-0609/_pdf/-char/ja