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『骨盤底筋』だけを鍛えればいいの?まずは骨盤内の構造を知るところから始めませんか?

こんにちは。Tatsuya@PT,pilatesです。

今回は体幹のインナーマッスルの中でも、よくピックアップされる骨盤底筋と、協力して働く支持機構についてお伝えします。

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骨盤底筋だけではNG

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骨盤底筋は妊娠・出産などのライフイベントによる弱体化や、中高年に多い尿漏れなどで着目される筋肉ですよね。

失禁トラブルなどには、「とにかく骨盤底筋を鍛えればOK!」と思われる方がいらっしゃるかもしれません。

ですが、私自身の経験では「骨盤底筋だけを鍛えて尿漏れがよくなった」という人はほとんどいません。

特に高齢者はほぼ服薬コントロールが必要です。

骨盤底筋以外の体幹のインナーマッスルや股関節回りの筋肉なども非常に弱くなっていますので、尿漏れなどの場合は身体全体をチェックする必要があります。

また、骨盤内の臓器を支えているのは骨盤底筋だけではありません。

骨盤内にはたくさんの靭帯や筋膜などが存在し、それらと骨盤底筋が協力し臓器を支えています。

姿勢崩れにより骨盤自体が崩れてしまうことで、骨盤底筋や靭帯・筋膜などが緩んでしまうため、失禁トラブルなどに姿勢の改善は欠かせません。

骨盤底筋だけを収縮させるトレーニングだけではダメなのです!

そこでまずは骨盤内の機能解剖をお伝えします。

骨盤内の組織を支える機構

骨盤を構成する骨、骨盤底筋群、それらに関連する靭帯などのご説明をします。

骨盤

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斜め後ろから骨盤を見たイラストです。

骨盤は左右の寛骨(かんこつ)と仙骨(せんこつ)、尾骨(びこつ)の大きく4つの骨から成り立ちます。

さらに寛骨は、腸骨(ちょうこつ)・恥骨(ちこつ)・坐骨(ざこつ)が合わさったものです。

骨盤底筋群

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少し見にくいイラストですが、身体の側面から見たときの骨盤底筋です。

骨盤底筋は3つの層(浅層・中間層・深層)に分かれており、約10個の筋肉が集まった総称になります。

もちろん、尿を我慢する筋肉や便を我慢する筋肉など、それぞれの役割も違います。

そして神経支配も異なるため、非常にややこしいのです(笑)

筋名;球体海綿体筋、坐骨海綿体筋、浅会陰横筋、外肛門括約筋、外尿道括約筋、尿道圧迫筋、尿道膣括約筋、肛門挙筋(恥骨直腸筋、恥骨尾骨筋、腸骨尾骨筋)、尾骨筋

神経支配;陰部神経、肛門挙筋神経、仙骨神経叢(S3,4)

骨盤の底をハンモックのように支える筋肉の集まりなのですが、ハンモックの端が恥骨や坐骨、尾骨になるため、それらの距離が近くなると骨盤底筋は緩んでしまいます。

恥骨・坐骨・尾骨の距離が近くなる場合、つまり姿勢崩れによる骨盤の歪みが骨盤底筋の機能を低下させてしまうのです。

 

 

失禁があるからと言って、骨盤自体が歪みハンモックが緩んだまま骨盤底筋だけをトレーニングするのは変だと思いませんか?

姿勢や歪みを直しつつ筋肉を鍛えた方がいいですよね!

尚且つ骨盤底筋を重力下で適切に使えるようになる必要があります。

筋肉以外の支持組織(腱弓・筋膜・靭帯)

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骨盤内の臓器が下へ落ちないようにするためには、骨盤底筋だけでなく、筋肉以外の支持組織である腱弓や筋膜、靭帯も重要です。

骨盤底支持機構;

骨盤筋膜腱弓、肛門挙筋腱弓、恥骨頸部筋膜、直腸膣筋膜、会陰膜、仙骨子宮靭帯・基靭帯

これらの支持組織は妊娠や出産、または他の理由で緩んでしまった場合、骨盤底筋だけが原因ではないことが考えられるため、注意が必要です。

まとめ

骨盤内の組織のイメージが想像できたでしょうか?

多くの筋肉で構成される骨盤底筋、それ以外の支持組織によって骨盤内の組織は守られています。

もちろん筋肉も大切ですが、筋肉以外の組織も知っていただければいいなと思います。

※近年女性ならではのマイナートラブルに対し、"産後の骨盤矯正"などと掲げる施術家やボディワーカーが数多くいますが、正直ちょっと怖いなと思ってしまいます。例えばこの記事で挙げた支持機構の中に、子宮内膜症によく関連する組織があり、それは手術が必要な可能性もあります。このようなリスクを知った上で"骨盤矯正"といった施術をしているのでしょうか?一般の方だけではなく、プロの方にも是非正しい情報を知って欲しいと思います。